2008年2月23日 於:龍谷大学 PM3:10~5:30
報告者:安 成浩(神戸大学総合人間科学研究科博士後期課程) 題名:中国朝鮮族社会における出稼ぎ要因に関する一考察:朝鮮族村落共同体の変容から見た朝鮮族社会の動態
討論者:原尻英樹(立命館大学)
本部会では、安成浩会員が中国朝鮮族社会における移動の問題を、牡丹江市の村落共同体の視点から考察した博士論文をまとめて報告した。本報告は、これまでの朝鮮族の移動に関する研究において、村落に焦点を当てた研究が行われてこなかったことを踏まえ、朝鮮族村落共同体の形成から「解体」までのプロセスを植民地支配、集団化、改革解放政策とグローバル化という三つの時期に分けて考察するものであった。 まず、本調査地では、主に南朝鮮から移住した人々による稲作の普及、文化大革命を中心とする政治運動による社会主義理想の村落建設といった複合的な要因があいまって集団化が開始・進展した。しかし、1980年代初頭からの集団化の解体と同時に外国との接触体験は、稲作の放棄、家族・教育の危機などの従来の朝鮮族共同体の「解体」とよばれるほど激変をもたらした。 以上の発表に対して討論者(原尻会員)は、本報告は朝鮮族村落研究に歴史的な観点を取り入れた非常に貴重な研究であるが、論文の学問的枠組については今後一層の精緻化が望まれるところであるとコメントした。 鶴島会員は、日本の事例と比較し、伝統的な村落共同体の存在していなかったところで村落共同体が形成されたという事例としての面白さや、稲作とコミュニティの関連性への言及を新しい視点として評価した。 出羽会員は、調査地であるH村と周辺の村との関係について、漢族村があるかどうか、通婚関係にあったかどうか、といった事実関係を確認した。また、今日の移動が村落に与える影響を、外国を体験した者と体験してない者の関係性から質問した。 その他、金美善氏は、集団化当初において南朝鮮からの移住者と北朝鮮からの移住者の間にコミュニケーションが困難であったというところに社会言語学的な立場からの疑問を述べた。
(文責:具知瑛)
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