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関東部会記録(2009年2月22日)

2012.04.11 08:27

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関東部会(2009222日 於:大阪経済法科大学麻布台セミナーハウス)

◆第一報告

 

報告者:朴銀姫氏(千葉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程)
テーマ:「在日」を生きること文学テクストの読み

討論者:宋恵媛氏(早稲田大学非常勤講師) 

 
◆第二報告

報告者:李文哲氏(千葉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程)
テーマ:延辺テレビコメディー(コント)の意味構造とイデオロギー

討論者:金光林氏(新潟産業大学人文学部教授)

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 本部会では、上記二つの研究報告が行なわれた。


 
【第一報告 要旨】
 本論は、植民地時代という極めて特殊な背景の中で書かれたテクスト「光の中に」を取り上げ、「主体性」の追求や挫折、抵抗を読み解こうとするものである。結論から言えば、「主体性」とは「意志」と「行動」との反復的な分裂、結合の中に存在する矛盾状態・生成状態の様相に他ならないということになるであろう。まず、このテクストは、自分に与えられた名前の呼び方によって、また自分の使用言語によって、主体の主体性が変わっていく事態を明確に提示している。「名前」という出来事の外部と自己意志という内面の相互関係についての分析から、主体性の追求や挫折、抵抗の中で生きてきた植民地朝鮮人の時代像を把握することができた。また、言語や血統に関する集団的イデオロギーが時代の支配的価値として個々人を抑圧する状況の中、それに対する個人の実存的抵抗を描き出したという点で、このテクストは植民地朝鮮人作家による日本語文学の中で例外的な意義を持つ作品であると思われる。
 
 以上の第一報告に対し、討論者(宋恵媛・早稲田大学非常勤講師)からは、以下のようなコメントがあった。

【コメント 要旨】
 今回の発表では、金史良「光の中に」のテクスト分析を通じて、在日朝鮮人の「主体性」が論じられた。従来の作品研究や批評が、金史良は抵抗作家か親日作家かという観点から主に行われてきたのに対して、緻密で繊細なテクスト分析を試みた点に本発表の意義があると思われる。その際、主にクリステヴァの記号論を援用し、同テクストに登場する「私」=南先生と山田春雄という二人の朝鮮人の「主体」を読み解いた。そして、それを、現在を生きる在日朝鮮人の「主体」をどう捉えるかという問題につなげて論じた。
 この発表に対して、テクスト分析上において不明瞭に思われた点について、いくつか質問をした。例えば、「私」の名前がサンボリック(「ミナミ」「ナン」という名前)からセミオティック(「私」の意志と行動)の領域に入ることによって変容し再生成され、再びサンボリックとしての現実社会に参入する、と発表者は論じた。これについて、その再生成されたものが具体的にどのような状態を指し、また、それがなぜ作品執筆当時の創氏改名政策の風刺といえるのか、という疑問などである。
 さらに、「光の中に」のテクスト分析が、現在を生きる在日朝鮮人の「主体」の問題にどのように接続しうるのかという疑問を提出した。つまり、「光の中に」というテクストの中の「在日朝鮮人」と、現在の在日朝鮮人の間に横たわる歴史的・政治的条件の差異をどのように思想的に処理するのかという点である。また、発表者は現在の在日朝鮮人を「一つの主体性では表象し得ない複合的・超越的な存在」と位置づけたが、なぜそのようにいえるのか、また他のコリアンダイアスポラにも同様のことが言えるのか否か、またその理由などについて質問した。

 その他フロアーからは、「在日朝鮮人」文学の概念的位置づけに関する質問(権香淑会員)や、本論と結語の整合性に関する助言的な発言(出羽孝行会員)などがあった。



【第二報告 要旨】
 現実とは距離のある混乱した状況を意図的に提示し、それを嘲るコントは、その独特な形式や大きな影響力をもとに、「性役割イデオロギー」、「家父長的イデオロギー」、「成功イデオロギー」などをより強化させ、再生産する。こうしたことから、コントと諸イデオロギーとの関係についての研究が必要となる。本報告は「イメージを生産・表現するテクストとしてのテレビ装置、イデオロギー的道具としてのテレビ」という観点に基づいて、多様な視聴者に多大な影響を与え、社会の諸葛藤を表出した延辺テレビの典型的なコントを選定したあと、それらのコントに表われた諸要素を指摘し、それらがプログラムの中でどのように作用しているか、それらのもつイデオロギー的意味が何であるかを明らかにすることを目的とした。具体的に、メディアテクストのイデオロギー的特性を分析する記号学的方法を使い、コントの内容に関するメタファー(パラダイム)・メトニミー(シンタグム)分析を試み、コントの有する含意を探り出すことにした。また、そうした分析を通じてコントの内容とそれらが内包している社会的イデオロギーとの関連性を把握することを試みた。

 以上の報告に対し討論者(金光林会員)からは、延辺TVのコメディーを分析する研究の斬新性を高く評価しつつ、論文の構成と書き方、論文のキーワードとして使用している用語の統一問題、作品に対する作者側の投影の度合いなどについて、質問が提示された。

 フロアーを交えた議論では、現場で活躍する延辺の放送関係者の認識(李光国会員)、比較の視点を導入する研究手法の有効性(笠井信幸会員)、政策的インプリケーションを含む研究の可能性(李鋼哲会員)などについて活発な議論が行なわれた。

 部会終了後に行なわれた懇親会には、当日の参加者のほか、現在、日本でフィールワークを行っている韓国人留学生も加わり、参加者同士が交流を深めた。

(文責:HP委員会)

以上の文面は、HP委員会が作成した素案に対し、報告者及び討論者による修正・加筆を経たものである。

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