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朝鮮族研究会

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関東部会記録(2009年5月20日)

2012.04.11 08:39

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関東部会(2009620 15001800 於:大阪経済法科大学麻布台セミナーハウス )

本部会では、下記二つの研究報告及び討論が行なわれました。報告者及び討論者がまとめたそれぞれの要旨を、以下に掲載いたします。


**********

【第一報告】

報告者:呉 茂松 氏(慶應義塾大学法学部非常勤講師)
テーマ:「中国タクシー業界における運転手たちの維権運動:諸維権事例に対する経験的な分析」
討論者:木村 知義 氏(21世紀社会動態研究所主宰・多摩大学客員教授)

[報告要旨](呉茂松会員)

 中国の都市化の進展と伴って高まったのがタクシーという新しい交通手段に対する社会的なニーズであり、それに応じて生まれたのがタクシー産業とそれに従事している運転手である。ところが、現実問題として、タクシーの所有権と経営権、営業環境、運転手の労働条件、運転手と企業との利益配分、政府の管理などめぐる争議事件が多発している。本報告では、タクシー業界における争議事件発生の政治的・制度的な背景を指摘したうえに、運転手たちの行動に焦点を当て、彼らの利益・権利に対する一連の行動について分析した。さらに、運転手たちの個人的、あるいは集団的行為の政策過程、政治秩序に与える影響について考察する。一連の分析を通じて、下記のような結論に至った。すなわち、争議事件の発生要因には、政府の不当な管理規制、関連法律の未整備、独占的な産業構造からなる利益配分のアンバランス、運転手たちの利益表出のチャンネルの欠如などがある。他方、タクシー運転手の維権行為の標的には企業、政策、政府があり、タクシー業界に対する管理改正に対する訴えが彼らの最終的な目標である。維権行為は社会運動的な性質を有し、その動きは政府過程、政治秩序の変化を促す重要な要因であった。

[
討論要旨](木村知義会員)

 「維権」という視角から、タクシー運転手のストライキを丹念に追って、それが今後の中国社会にどのような影響を及ぼし、どのような意味を持つのかを考察するチャレンジングな研究だと感じる。中国でもタクシー業は、規制(管理)と自由化(規制緩和)のはざまにある業界であることから、地方政府による許認可、管理をめぐって不正や「管理の不備」が生まれ、過酷な労働条件への「不満」などとあいまって運転手の抵抗運動が起きる構造が詳細に分析されている。発表されたデータやメディアで報じられる情報だけではなく、現地に赴き聴き取りを行うなど、現場に立って取材、調査を重ねて分析するという手法は説得力を持つ。その上で、(1)各地のストライキはある意味で「整然」と計画的におこなわれている印象を持つが、指導者もしくは指導部が生まれているのか、生まれているとすればどのようなものか(2)権利意識に目覚めたタクシー労働者が共通の目標を掲げ、地域をこえた運動になっていく可能性はどうか(3)中華全国総工会との関係はどのようなものか、総工会の枠組みをこえた産業別労働組合のような運動に発展する可能性はあるのか(4)背景には労働契約法の施行などに促された権利意識の高まりがあるのか(5)さらに、中央における権力の移動という政治革命に対して、「社会的諸権力」という位置づけから「維権」をどうとらえるのか、また、反政府運動につながる可能性をどう見るのか、などいくつかの点についてさらに深めてほしい。「和諧社会」を掲げる中国にあって、タクシー労働者のストライキをも含めた各分野の「維権」運動が、社会を変えていく契機としてどのような意味を持つのか、これからの中国社会をどう突き動かしていくことになるのか、呉茂松氏の研究の「総合」に期待したい。


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【第二報告】

報告者:権 寧俊 氏(新潟県立大学准教授)
テーマ:「中国朝鮮族における民族教育の変容と課題:ポスト文化大革命期を中心に」
討論者:崔 学松 氏(大東文化大学・関東学院大学非常勤講師)


[
報告要旨](権寧俊会員)

 本報告では、中国朝鮮族における民族教育の変容とその課題について発表した。特に1970年代末にはじまる改革・開放期の民族教育の問題を中心に報告を行なった。改革開放期は、少数民族教育の新たな発展の時期である。文革が終結されると、「大学入学統一試験」制度によって民族語での大学受験が可能になり、民族学校への寄宿制度が導入されるなど民族教育の復権が行い、新たな時代を迎えるようになった。しかし、この時期においても民族学校の漢族学校との学校統廃合問題、学校における三言語(外国語を含む)教育の問題、教科書と教員のレベルの問題など解決困難な問題が存在しつづけている。そこで発表では、この問題を解明するためにまず、文革期の朝鮮族においての民族教育問題を検討した。第2に文革終決後において朝鮮族の単一民族学校が漢族学校の統廃合される問題について報告した。第3に、朝鮮族民族学校の言語教育問題の一つである「3言語教育」の問題と学制改革問題について考えた。第4に、朝鮮族民族学校の教科書や教員のレベル問題を提起し、この問題が朝鮮族民族教育における影響について報告した。


[
討論要旨](崔学松会員)

 報告者は、文化大革命後における中国朝鮮族のおかれた困難な状況を背景に、言語問題に焦点をあて、国家の政治方針に翻弄される民族教育の破壊の実態を明らかにした。また、豊富な史料に基づき、朝鮮族知識人たちの自主的な復興の過程を詳細に分析した。とくに、ポスト文化大革命期である1970年代末から80年代までの改革開放初期においては、文化大革命の負の遺産を背負いながら、民族教育が政治思想教育の枠組から抜け出すことは困難であったと論じている。この論点は、今まであまり取り上げられてこなかったために、中国朝鮮族における民族教育の学術研究に大きな貢献になると思う。しかしながら、越境的な存在としての中国朝鮮族の社会的背景や東アジアの国際的政治関係などが十分に取り上げてられておらず、些か残念である。とくに、90年代以降、改革開放の本格的な展開にともなう朝鮮族社会の大きな変化が民族教育に及ぼした影響、および朝鮮語認識や民族意識の変化については、具体的な論述が少なかった。今後の研究成果を期待したい。

(以上)

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