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朝鮮族研究会

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朝鮮族研究会

関東部会記録(2010年2月26日)

2012.04.11 08:46

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第一報告

報告者:木村知義 会員(21世紀社会動態研究所主宰・多摩大学経営情報学部客員教授)
テーマ:「中国の衝撃!メディアが伝える中国・アジアに何を見るのか」
討論者:フロアー・ディスカッション

 いまメディアが伝える世界と日本の動きの背後に目を凝らすと、いずれも中国の存在に突き当たる。

 たとえば、NHKスペシャルの「メイド・イン・ジャパンの命運」「チャイナパワー」「ランドラッシュ~世界農地争奪戦~」を解析してみると、フラット化する世界で、技術をはじめさまざまな分野での日本の比較優位性が揺らぐ一方、経済のみならず政治、文化などあらゆる側面で中国の存在感が飛躍的に増していることが語られていることに気づく。

 新聞や経済誌など、ペーパーメディアにおいても、この半年ほどの論調をたどってみるだけでも同様のことが見えてくる。

 まさに「中国の衝撃」というべきであるが、これらは「中国崩壊論」というべき言説が崩壊した後に一層顕著になったメディア現象といえるであろう。

 こうしたメディア現象を見据える際、重要なことは、冷戦崩壊後の20年間に起きた、「唯一の超大国アメリカ、全能のパワー」そして「市場原理主義」という、二つの「幻想」の崩壊という世界史的な変化の文脈のなかで、中国の衝撃が語られていることだと考える。言葉を変えると、ポスト・クライシスの時代に沸き起こる中国ブームであり、同時にそれと表裏一体の中国脅威論というべきだ。

 そのようななかで、一方には「自信喪失のニッポン」にどう誇りと自信を取り戻すのかという、いわば「対抗言説」というべき現象がメディアに起きはじめていることに注意を払う必要がある。

 たとえば、日本人に勇気と自信を呼び起こすと話題になっているドラマ「坂の上の雲」だが、そこに内在する作者の司馬遼太郎氏の「朝鮮観」がはらむ問題などは慎重かつ深い検証が必要になるというべきではないか。

 「日本は、その歴史段階として朝鮮を固執しなければならない。もしこれをすてれば、朝鮮どころか日本そのものもロシアに併呑されてしまうおそれがある。この時代の国家自立の本質とは、こういうものであった。」といった言説を深い吟味をせず受け取ってしまうということでいいのだろうか。

 日本はアジアでの覇権をどう構想しはじめたのか、その淵源をどこに見るべきなのか、一例として谷干城の1887年の「意見書」に注目してみた。外からの脅威に抗するためという、従来からいわれていた言説をこえて、むしろ内在的な「欲求」として、アジアに覇を求めるべきとの考えが示されている。

 一方で、そうした「対抗言説」に対する根源的な批判言説のひとつとして、石橋湛山の「大日本主義の幻想」などを読み直しながら、これからの日本の行き方を考えてみることも無意味ではないと感じる。

 また、GDPで中国に抜かれ、「世界第二の経済大国」の座を滑り落ちるとば口に立つ今、アンガス・マディソンのGDP推計が示す2030年の世界の中での日本の位置を見つめると、明治維新までほぼ半世紀という時期の江戸時代のそれと重なるものであることに気づく。しかも、ゴッホをはじめ西欧への江戸文化の影響など、「鎖国」の時代だったにもかかわらずグローバルな広がりをもった日本の存在感を忘れてはならない。つまり、石橋湛山の「小日本主義」と、対外戦争をせずアジアの近隣諸国とも比較的よい関係を結んできた江戸時代の日本のありように、いまあらためて学ぶべきことはないのかということである。それは同時に中国にとっても、「中華」の超克と多民族国家としての「国のかたち」、さらには世界の中で果たすべき役割はどのようなものかといった、いくつかの課題を投げかけるものでもあるだろう。

 メディアが伝える「中国の衝撃」とそれと裏腹にある日本の「ゆらぎ」を前にして、あらためて、アジアをテーマにする研究者にとっての歴史的課題と果たすべき使命の重さについて提起しておきたい。



第二報告

報告者:笠井信幸 会員(アジア経済文化研究所 首席研究員)
テーマ:「在日韓国人の組織的祖国支援活動とモチベーション」
討論者:フロアー・ディスカッション

目的・動機
在日韓国社会研究の主流は、渡来以来の日本国内定着過程における諸問題であり、多くの研究が悲壮・被虐的な感が強い。本研究は、こうした在日研究の主流を変える一助となすべく、新しい観点から考究したものである。本報告は、在日韓国人の戦後60年祖国支援史の整理した成果をもとに、代表的な組織的支援活動を取り上げ、その特徴と在日韓国人の支援モチベーションを考察し、在日韓国人の祖国貢献を明示する。

要旨
在日韓国人達が初めて本国のために一致協力して組織的な支援活動を行ったのは1948年に開催されたロンドン・オリンピック参加選手団への支援活動であり、その形態(資金・物品)、支援精神(愛国心)等はその後の支援モチベーションのプロトタイプとなった。戦後祖国支援史において代表的な組織的支援活動はセマウル運動への支援、ソウル・オリンピック支援そしてIMF通貨危機支援である。しかし、支援の基本的活動は、干害、水害、火災、台風被害等の天災・人災に対する災害支援であり、他の支援が時限的であるのに対して、災害支援は内容が変ってもその度毎に続けられている。

結論
韓国の国難、国家行事において在日韓国人の祖国貢献を明らかにした。支援に現れるモチベーションは、基本的に生まれ育った共同体や郷土を愛し、慈しむパトリオティズムに支えられた。だが、祖国や在日社会の発展に伴い、そのモチベーションも国家の一員としてのナショナリズムの特徴を示す。しかし、個々人の愛国心は依然としてパトリオティズムに支えられており、各人の故郷への愛郷心、地縁・血縁者への想いは在日韓国人の基底的心理と言える。
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