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朝鮮族研究会

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朝鮮族研究会

関東部会記録(2010年7月25日)

2012.04.11 08:56

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第一報告

報告者:李光国会員(聖徳大学)
テーマ:「中国図們江地域協力開発計画と延辺の経済発展」
討論者:笠井信幸会員(アジア経済文化研究所首席研究員)

[
報告要旨]

 2009830日中国中央政府は「中国図門江地域協力開発計画綱要――長吉図を開発開放の先導区にする」を許可した。これは中国の沿辺(国境沿いの地域)の開放水準の向上戦略として、東北古い工業基地の振興にも重要な戦略で、吉林の改革開放と振興発展の重要な機会である。今まで、吉林省、特に延辺は戦略的な経済発展計画がなされていなかった。結果的に産業間のバランスが合わなくて、飛躍的な発展を成し遂げることは出来なかった。しかし、今度の計画は延辺が発展するいい機会である。私は延辺出身の者として延辺の経済発展を祈願して政策的な提言を行いたい。

 図門江地域協力開発計画を東アジアは経済補完性から見てみよう。

 ロシアの東シベリア・極東地域には石炭・石油・天然ガスなどの豊富な天然資源、豊富な森林資源、鉱物資源と海洋資源があってこれらの資源を日本と韓国の資金と技術で開発すれば巨大な市場になるだろう。
 
 中国の東北地域は1億の人口、豊富な労働力、有利な農業条件、豊富な森林資源と水力発電資源がある。最近は中央政府の「東北古い工業基地を振興させる政策」で変わりつつあるが、中央政府と地方政府共に日本と韓国の資本・技術協力を望んでいるはずである。

 北朝鮮は地理的な位置から見ると北東アジアの中心で羅津港と清津港は北東アジアの貿易では欠かせないものであろう。

 韓国と日本は完全な資源輸入国で、賃金の上昇によって労働集約型の産業は比較優位性をなくしている。しかし、技術、資本、経営面では世界に誇るものを持っている。特に日本と韓国は資源輸入国として、ロシア極東の石油と天然ガスは、北東アジア経済補完関係の中でももっとも重要な位置にあるだろう。

 中国には200万人の朝鮮族。朝鮮族は中国の中での教育水準が高くて、朝鮮族のネットワークは韓国・北朝鮮とってとても有利な環境である。

 長吉図先導区の意義は「地域経済の一体化を加速させて、国内と国外を協調させることによって、東北地区で図門江を基地にして、北東アジアに向けての開放体制を整えることは、わが国が図門江地域協力に参加するに当たって有利な条件になると共に開発協力をもっと高いレベルにすることが出来る。また、生産要素の国際的流動と生産優位性の組み合わせにも有利で、わが国と北東アジア国家間の経済補完関係の加速にも有利で、相互の利益と北東アジア地域の平和発展の国際環境にも有利である。


[
討論要旨]

 本報告は、中国政府が国家開発プロジェクトとして20098月に正式決定した「中国図門江地域協力開発計画綱要――長吉図を開発開放の先導区にする」に関する研究で、国家・吉林省の開発方針を詳細に指摘し、その上で東北アジア地域における意義付けを行った秀逸な報告である。報告要点は、東北アジアの経済的補完性、当該計画効用の中央政府・省政府の対策、政策提言に集約される。

 報告者の主張の一つは、長吉図地域と周辺国家である、ロシア、韓国、日本、北朝鮮との経済的補完関係であるが、その根拠は周辺諸国の持つ経済資源と長吉図地域の資源活用を主張するが、報告ではそれぞれの持つ資源が指摘されたものの具体的な資源連結の方法、期待される連結効果、そのための具体的・現実的な長吉図地域の対応などにまで踏み込んでいなかったのは残念である。

 中央政府・省政府の対策に関しては、政治家の発言を根拠とする指摘があるが、政策検討に関しては具体的な経済分析を根拠とした主張が必要であろう。そのためには、地域開発論、海外投資論、経済統合論などの関連する理論的考察は欠かせないであろう。また、報告者が最後に主張する「延辺がとるべき具体的な計画」として五点が提示されているが、それぞれ同地域をよく知る報告者ならではの興味深い提言がなされている。ただ残念なのは、いずれも「べきだ論」に止まり、各主張の分析的根拠が示されなかったことだ。いずれも興味深い政策提言だけにその理由となる経済分析・統計分析などで裏付けられることが期待される。



第二報告 

報告者:李守会員(昭和女子大学)
テーマ:『朝鮮語規範集』(2007)の成立まで
討論者:崔学松会員(大東文化大学)

[
報告要旨]

 多民族・多言語国家である中華人民共和国において諸民族の一律平等は憲法によって保障される。各民族はそれぞれの言語・文字を使用し発展させる自由を有する(4)。しかし、漢語(いわゆる中国語)という大言語に囲繞される少数民族がみずからの言語を継承するのは容易でない。朝鮮族はかれらが集住する東北三省の実務者を招集して『朝鮮語規範集』(1977)を制定し、朝鮮族があまねく守るべき朝鮮語の統一的規範をもうけた。数字の改定をへたのち、初版から30年後の2007年、現行の『規範集』が出版された。

 『朝鮮語規範集』(以下、規範集)は「標準発音法」「綴字法」「わかち書き」「文章符号法」の4部門からなる。これは朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)1966年から通用する『朝鮮語規範集』をほぼ踏襲したものである。朝鮮族は中国の友邦である朝鮮の言語規範に多くを依存した。

 そもそも、朝鮮半島の南北で通用する2種類の正書法は、1933年朝鮮語学会(のちのハングル学会)が発表した『朝鮮語綴字法統一案』(以下、統一案)に基礎をおく。分断後、大韓民国(以下、韓国)では1988年の『ハングル正書法』まで『統一案』が準用され、一方、朝鮮では建国後、『朝鮮語綴字法』(1954)、『朝鮮語規範集』(1966)、『朝鮮語規範集』(1987)と目まぐるしく言語規範が変わるが、骨格はほぼ同じである。(『朝鮮語新綴字法』が建国前の19481月発表されるも、全面的実施の形跡はない)

 韓国では標準語を一貫してソウルの方言と定めているのに対して、朝鮮では特定の地名をふせたまま「朝鮮語のさまざまな発音のなかから」朝鮮語の発達にかんがみて標準発音法を選択すると規定している。平壌の方言が「文化語」と称する規範となるのは1987年からである。中国朝鮮族は、特定の地名を明示しない1987年までの朝鮮方式にならい、『規範集』「総則」で「わが国(中国)朝鮮族人民にひろく話され、朝鮮語発達法則に合う発音」を選択すると規定した。延吉でも平壌でもソウルのことばでもない「朝鮮語発達法則」に標準発音法の規範をゆだねたところに、民族語の維持・継承を政治に翻弄されたくないとねがう朝鮮族の叡智を見てとることができる。


[
討論要旨]

 本報告では、『朝鮮語規範集』(2007)にいたるまでの中国延辺朝鮮族自治州における朝鮮語正書法の変遷を北朝鮮,韓国と比べながら論じた。

 中国朝鮮族は中華人民共和国のなかで民族的少数者として位置付けられて,多民族国家の一構成員として構成し直す必要があった。その影響はかつて植民地支配を受けた自治州にも及び,50年代末以降,朝鮮語純化運動を担った知識人のなかでは,朝鮮語規範化統一運動や外国語からの借用問題などが自治州の政治的過去と結びつけて語られた。そこでは,獲得すべき目標として,民族語と民族文化を持った自治州の姿が議論されていたのである。
 
 その後に、朝鮮語純化運動の理念が具体化される規範化法案制定作業を経て制度化された法案では,漢語の存在が朝鮮語を凌ぐなか,漢語からの借用の問題が朝鮮語規範化との結びつきを強め,規範化に関する認識に二分化された事態が生じた。この点で韓国や北朝鮮の状況とは大きな違いがある。つまり、韓国や朝鮮など、ほかの東アジアの地域と比較する観点からみれば、マイノリティー集団として中国共産党による政治的支配を受けた点に、他のケースに見られない大きな特徴がある。
 
 建国とともに中国の領域に組み込まれた朝鮮族は、植民地の経験が作り出した言語状況に対して、選択と排除という多様な葛藤の様相を呈していた。長期にわたる政治的動乱を経て、朝鮮族の母語である朝鮮語には、漢語語彙からの「侵入」が行なわれた。いわゆる「延辺朝鮮語」の誕生である。

 本報告では、その経過を解明すると共に、朝鮮半島で使用される朝鮮語との比較によって、今後の「朝鮮語」研究における新たな議論の土台を提供することができた、と考える。本報告が明らかにした論点は、中国朝鮮族における「民族と言語」の問題である。しかし、この課題と密接な関係をもつ日本・韓国・北朝鮮・中国における「民族と言語」の問題、及び朝鮮人のナショナル・アイデンティティの問題を考えていくためにも、有益であると思われる。



第三報告 

報告者:李燦雨会員(東京国際大学)
テーマ:「南北朝鮮関係の現状と展望」
討論者:李 鋼哲会員(北陸大学)

[
報告要旨]

 3月の天安艦沈没事件以降、現在の南北関係は緊張が高まっている。韓国内には南北関係に対する二つの異なる視点、すなわち、南北統合的(民族優先)視点と南北分離的(国家優先)視点が対立している。一方、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)は、朝鮮中心の民族主義(民族主義=国家主義)を持ち、南北関係においては「民族大団結」を、国際関係では朝鮮を中心に米朝関係を南北関係より戦略的に優先する視点を持っている。

 南北共通の視点が必要であるが、その内容としては、(1)民族同士の主導による統一追求、(2)南北経済共同体の飛躍的発展、北朝鮮経済の弾力性拡大、(3)韓国と朝鮮の体制安全保障を前提に米朝、日朝関係の正常化に寄与、などを提起したい。

 現在、韓国政府の反朝鮮政策は、「支援無しの対北交渉」、「中米を結ぶ経済・安保協力」により、市場経済圏ラインの強化の特徴を持ち、朝鮮の変化(非核・開放)を前提とした政策を堅持している。朝鮮政府も、韓国政府に対する強硬策を崩さない立場である。天安艦事件以降、米国オバマ政権の対朝鮮政策が急速な正常化に向かない限り、南北関係は緊張維持あるいは衝突の可能性が高い。国際社会の朝鮮半島安定化のための努力が緊急である。


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