研究活動
朝鮮族研究会

部会記録
朝鮮族研究会

4回日本朝鮮族研究学会全国大会  2010.12.18(午後の部) 


=教育・文化セッション=

1報告

報告者:尹紅花(麗澤大学言語教育学科比較文明文化専攻博士後期)
テーマ:「中国朝鮮族の漢語教育に関する研究中国朝鮮族の中国人らしさの根源を求めて」
報告要旨:

 日本に来てはじめて中国朝鮮族としてのアイデンティティを意識するようになり、そのルーツを知りたく、朝鮮族の歴史と教育を研究テーマとして、修士2年と博士3年を費やした。その過程で、韓景旭(『韓国・朝鮮系中国人 朝鮮族』中国書店)、劉京宰(『中国朝鮮族のエスニシティ形成と拡散に関する研究』名古屋大学国際開発研究科博士論文)、許寿童(『近代中国東北教育の研究』明石書店)、金美花(『中国東北農村社会と朝鮮人の教育吉林省延吉県楊城村の事例を中心とし て(1930‐49) 』お茶の水書房)など在日朝鮮族研究者の本と出会い、中国朝鮮族研究会とも出会った。
 今回の発表テーマである「中国朝鮮族の漢語教育に関する研究」もこれまでの研究過程においで、朝鮮族のルーツの一つである「中国人らしさ」を認識するためである。朝鮮族は、朝鮮民族のアイデンティティと中国人としてのアイデンティティ両方もっている。日本で生まれた子供は、さらに日本文化の洗礼を受けて、家庭の中で両親が持つ二つの文化を加えられ、三つまたはそれ以上の文化を持つことになるだろう。多重文化体系を持っていることは、その分、心の迷いも多いことを意味する。ルーツをしっかり教えることは、個個人において一生のエネルギーになると考えられる。朝鮮族より、60年前に日本に来て純粋な日本人として生きる道を選んだ台湾人の老後の研究も盛んに行われているが、その結果は「悲劇」と言わざるを得ない。この発表を通じて朝鮮族としてのルーツを知り、先人の経験を踏まえることの大切さを広めればと考えるしだいである。


討論者:崔誠姫 (一橋大学)
討論要旨:

 尹報告は中国朝鮮族、特に延辺地域に在住する朝鮮族が、どのような漢語教育を受けてきたのかを、歴史的な流れに基づいて考察したものである。文革で朝鮮語教育は不要とされ漢語の授業時間数が増え、文革後にはその反省から漢語の時間数が減り、最近では朝鮮族のライフスタイルの変化から朝鮮語と漢語の時間数がほぼ同じくなったというのは大変興味深い。朝鮮族社会の変化がそのまま、漢語教育の時間数に反映されているように考えられる。
 報告では大学受験の際に漢語と少数民族言語を同時に受験させ、その平均を国語の成績とすること、少数民族学生を優先して合格させる方針であったことが指摘された。漢語に堪能ではない少数民族を抑えるため、優秀な少数民族学生を党の幹部として育成するという意図であるという点は、植民地におけるエリート養成とも通じる部分がある。
 朝鮮族にとっての漢語は社会進出のためのツールであり、社会生活の変化から朝鮮族の周辺には漢語があふれている。このような環境で民族言語である朝鮮語と漢語の関係がどのように変化していくのかを知るための、出発点となる報告であったといえよう。


2報告

報告者:厳貞子 (ECC外語学院)
テーマ:「プリズムに屈折された移住民族の朝鮮人生存像趙星姫と柳美里の作品世界を比較」
報告要旨:

 趙星姫と柳美里は離婚による家族離散という辛い経験をした。似たような痛みを持った二人の作家が、自分の実際の生活からモチーフを持って来ているため、彼女らの小説が似ている雰囲気を帯びることは当前の事でもある。つまり、精神的傷をモチーフにしたため、それぞれの作家が、不安定な家庭の中で主人公個人が経験する内的な苦痛と孤独な精神世界を主に表現するようになるのも当然なことである。そのため柳美里小説は私小説と見られている。また、二人は移住民族朝鮮人という運命に生まれついた。だから彼女らが描き出す個人的な家族の話の裏側には離散民族としての痛みと不運な生存実態のシルエットが浮かんでくるのである。
 このように創作個性や創作手法が似ている二人の作家の作品を比べることを通じて、離散文学の本質を見出すことができる。移住した場所で望んでいた幸せを得ることができない時の、何かを剥奪されたという喪失感と何かを失ったという欠乏感から生ずる不幸意識の産物が離散文学である。趙星姫と柳美里はそれぞれの作品を通じてこの本質を文学的に表現しているのだ。ただ離散民族の悲運を直接真正面にではなく主人公の家族関係や精神世界を通じてプリズムに屈折させて見せてくれている。またこのような現実を直視し、現実の病幤を見出す批判的意識を持ち、離散民族の生存実態を描き出すことで、この二人の作家は文学史に自身の名前を残せると考えられる。


討論者:朴銀姫(千葉大学)
討論要旨:

 趙星姫と柳美里の作品を比較して分析するというところに、本研究の独創性がある。二人の女性作家の作品を、家族、女性、民族などのキーワードを用いて「比較分析」するということは、比較文学研究の一つの方法として非常に意義あるテーマであると思われる。
 ここでは、文学批評の方法論に基づいて、問題点を提起しようとする。本報告は、「作家自身の経験が自然に作品に表現されている」ところに注目し、「作家と家族の実際の様子をモチーフにして作られた作品である」と評している。したがって、本研究は作品には作者の経験や意図が込められているという実体論(作家論、作品論)から離れることができなかった。「作家論」は、20世紀初頭に確立された文学研究であり、環境と作家、環境と作品、または作家と作品の綿密な因果関係を前提に成立した「実証主義的文学研究」である。こうした文学研究の主流は、作家の経験、伝記的事実に関心を集め、実際の生活の細部を探り出すことであった。
 これに反して、1950年代に欧米を中心に「新批評」が確立され、作家よりも作品そのものへ注目する時代が到来した。特に1960年代に入ると、「読者論」へと向かい、その中もっとも有名なのはロラン・バルトが1968年の論考で名付けた「作者の死」である。「読者論」は、多層的・多元的意味の可能性を生み出す文学研究装置なのである。「作家論」から「読者論」へ、「作品論」から「テクスト論」へと転換した文学批評理論によれば、テクストとはシステムという差異の体系が織り上げる記号の織物にすぎない。本研究において、書き手中心の「作家論」から離れて文学作品を読むということは、多様な読みを可能にする方法であると思われる。したがって、今後の研究において現代文学理論や方法論を適用し、テクスト分析を行うことを提案してみる。


第3報告

報告者:梁桂熟 (日本図書館情報学会)
テーマ「『中国分類主題詞表』について」
報告要旨:

 情報組織化の代表的なツールとして分類表と件名標目表がある。中国の分類件名一体化ツールの代表的な総合的検索ツールとして『中国分類主題詞表』(以下,『詞表』と表記)がある。『詞表』は,分類法である『中国図書館図書分類法』(『中図法』)と件名標目表である『漢語主題詞表』(『漢表』)を結合して,19946月に中国図書館図書分類法編集委員会から出版され、「分類記号-件名標目対応表」と「件名標目-分類記号対応表」で構成されている。「分類記号-件名標目対応表」は,分類記号から件名標目への対照索引体系である。「件名標目-分類記号対応表」は,件名標目から分類記号への対照索引体系である。『詞表』は分類件名一体化詞表であると同時に,完璧な『中国図書館図書分類法』(改訂を行った『中図法』第三版)と完璧な『漢語主題詞表』(改訂を行った『漢表』)ともいえる。独立に分類検索と件名検索に用いることができるだけでなく,お互いに他方の欠点を補い合っており,その機能は単一の『中図法』と単一の『漢表』より優れているといえる。『詞表』は中国における分類件名一体化のもっとも本格的な成果であるとともに,実際に使用されて情報組織化に大きな影響を与えている。


討論者:谷川雄一郎(神奈川大学)
討論要旨:

 本報告は、中国における図書分類一体化ツールである『中国分類主題詞表』の構造、一体化の過程、およびその背景について整理したものである。日本でもあまり研究の蓄積がみられない内容であり、稀少価値を有するものである。
 本報告で中国が図書分類の一体化を研究・開発した背景として「情報資源の急速な増加とそれに伴う情報検索の普及の影響」と論じているように、書誌情報の充実化は、近年インターネットなどによる高度な検索システムの構築と、それに付随する研究の細分化などにより、ますます喫緊の課題として浮上していくものと思われる。これは中国のみならず、世界各国で普遍的にみられる課題であり、今後、各国における取り組みを相互に対照しあい、課題を共有することが求められるようになるのではないか。朝鮮族の存在に引きつけて考えるならば、例えば韓国や朝鮮の図書分類法についても研究することが期待される。

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