研究活動
朝鮮族研究会

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朝鮮族研究会

 4回日本朝鮮族研究学会全国大会  2010.12.18(午後の部) 


=経済・法律セッション=

第1報告

報告者:崔麗霞(信華㈱)
テーマ:「日本企業で働く中国朝鮮族のモチベーション研究について」
報告要旨:

 本論文の主要な目的は、日本企業に就職している中国朝鮮族がますます増え続ける現状に鑑み、日本における中国朝鮮族の生活実態を把握することによって、日本企業に働く彼らのモチベーションのあり方を探求することにある。
 企業間競争が世界規模で繰り広げられる中で、競争優位を確立し生き残っていくためには、経営資源の中の1要素である「人材」の確保は各企業が必死になって取り組んでいる課題のひとつである。ここで大切なことは、確保した人材が他社へ移動しないように対策を講じることである。就職活動の時から企業は多額の投資をして人材を確保し、教育を施し、使える資源に育てていく。社員ひとり一人に投じた額を回収することは容易ではない。過去において、日本では終身雇用が当たり前であり、新卒で入社した会社から転職をしようとするものは多くなかった。そのため、企業は長い年月をかけて、社員に投資した額を回収することが可能であったと言える。しかし、「日本的経営」の三種の神器が崩壊し、不満があれば簡単に辞めていく従業員の増加に伴い、それを回収することは困難を極めている。働く従業員がどのような時にモチベーションを高め、どのような時にモチベーションを低下させるのかを知ることは、モチベーションを低下させる要因を除去することで、人材が他社へ流出することを防ぐこととなる。結果としては企業にとって必要な人材を企業内に留めておくことにつながる。
 しかし、いままでの研究は企業で働く日本人従業員のモチベーションについての研究であり、日本企業で働く中国朝鮮族のモチベーションの研究はみられない。そのため、本論文では、日本企業で働く中国朝鮮族のモチベーションについて検討していきたい。
 本論文のモチベーション研究においては、性別・年齢・仕事に対するモチベーションとの相関をインタビュー調査と質問表調査によってあきらかにしていきたい。ここで、性別や年齢と仕事に対するモチベーションの相関を調査するのは年齢別に人がどのようなことにモチベーションを影響しているのかということについて違いをさがし出せるのではないかと考えている。また、性別に関しては、性別の違いによってもたらされるモチベーションの差異をみられるのではないかと考えている。
 本論文の構成は以下のとおりである。第1章では、日本企業における中国朝鮮族のモチベーションの重要性について触れて、本研究の必要性を検討する。第2章では、いままで行われてきた従業員のモチベーションに関する理論や研究について考察して、仮説の構築をおこなう。第3章では、仮説の妥当性を探るため、インタビュー調査とアンケート調査を用いて、実際に日本企業で働く中国朝鮮族の人たちを対象に調査をおこなう。第4章では、インタビュー調査に基づいた実証分析を行う。第5章では、中国朝鮮族に対する日本企業の対策を探ることで、仮説の再確認と修正をおこなう。最後には、残された課題と今後の展開について検討する。


討論者:朱永浩(環日本海経済研究所)


第2報告
報告者:穆尭芋 (環日本海経済研究所)
テーマ「中国延辺州における韓国ビジネス経営者層の形成、特徴と課題について」
報告要旨:

 本稿は延辺州における韓国ビジネス経営者層に焦点を当て、中韓国交正常化から現在にいたるその形成の過程、経営上の仕組み・実態・特徴、今後の発展に向けての課題について検討する。
延辺州における韓国ビジネスは多業種に及んでいるが、本稿では主に韓国商品を仕入れて中国国内に販売するビジネスに焦点を当てて検討する。韓国ビジネス経営者層の形成には、1980年代末期までの準備期、1990年代初期から1990年代末期までの形成期、2000年から2006年前後までの発展期、2006年から現在までの調整期を経験していると考えられる。
 延辺州の韓国商品の販売拠点は韓国商品専門卸センター、韓国商品を取り扱う総合デパート、韓国商品専門スーパーの3つに分けられる。韓国ビジネスは中韓関係の影響を受けながらも独特なビジネススタイルを持って発展してきた。女性の経営者が圧倒的に多く、女性特有のセンスを生かし、日用製品を通じて中国人に新しい生活様式を提案しようとしていると言えよう。
 近年は韓国行きビザの緩和、航空運賃の値下げ及び中韓の人的交流の進展により、韓国商品のビジネスは一層厳しい競争に直面している。今後はテナント経営から会社経営へのビジネスの質の向上、販売規模の拡大及び販売ルートの確保、「二代」への教育や訓練などの課題が残されている。韓国ビジネス経営者層の将来の展開について、今後も注目していきたい。


討論者:李鋼哲(北陸大学)
討論要旨:

 本報告は穆尭芋氏が数年に渡って延辺や瀋陽に現地調査を行った成果をまとめた調査報告である。朝鮮族に関する調査研究で、今までは歴史・文化・教育、そして移動問題に関する研究は見られるものの、企業家を対象にした経営学の視点からの追跡調査研究では初めてである。環日本海経済研究所という新潟に本拠を置く日本の地方シンクタンクでは、東北アジア地域における経済交流の実態を随時把握・分析することを目的にこの種の調査研究を行う意味は大きい。
 発表者が取り上げているように、延辺朝鮮族自治州という特殊な環境に置いて、対韓国ビジネスは中国のなかでも最も活発に展開されており、その担い手をなしているのは成宝グループである。東北アジアにおける国境を越える地域対地域の交流はこうした担ぎ屋商売を武器としたビジネスマン(ウーマン)がそのパイオニア的な役割を果たしているのは決して珍しいことではないが、それを実態調査に基づいて実証分析し、それを学問的なレベルまでに引き上げるための研究をすることはとっても意義深いものがある。
 本研究は東北アジア地域研究において重要な視点を提供するものであると同時に、今後は学問的な見地でどのような理論的な枠組みを構築し、どのようにその普遍的な価値を追求するかについて取り組む必要があるだろう。具体的には、この担ぎ屋商売がそのまま担ぎ屋商売で終わるのではなく、そこで蓄積された商業資本がどのように自己増殖(拡大)するか、または産業資本に転換できるのかどうかを引き続き考察することも今後の課題として重要であろう。

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